ひとり音楽の楽しみかた

ひとり音楽の楽しみかた

僕の音楽の楽しみ方は、昔からずっと一人で完結している。
べつにコレクターでもないし、音響マニアでもない。フェスに行くタイプでもない。
“ちゃんと楽しむための知識”みたいなものも、正直そこまで求めていない。
高音質がどうとか、ケーブルの違いがどうとか、そういう話をしたいわけでもない。

ただ、曲そのもの──旋律とか、ビートの組み方とか、世界観の作り方とか。
そういう部分に触れた瞬間、勝手にニヤニヤしてしまう。
誰かに説明したり、共有したりする必要がないからだろう。
僕の中だけで味わえばそれで満足できる、そういう楽しみ方だ。

普段はApple Musicのステーションを流しっぱなしにしている。
自分の好きな曲だけ聴くと、どうしても偏る。
それよりも、ガチャガチャを回すみたいな“ランダム性”の方にワクワクする。
突然、自分の好みにど真ん中の曲が流れる瞬間が一番うれしい。
知らない曲にいきなり出会う驚きも好きで、そのためにステーションを使っている。

いま「レベル」という企画をやっている。
毎週、10曲。自分が“格好いい”と思った曲だけを選ぶ。
翌週になったらそのリストと合わせて20曲にして、そこから10曲に半分まで絞る。
で、その10曲がまた次の週の“原石”になる。
レベルAは毎週の10曲。
レベルBは、レベルAを2週分まとめて半分にしたもの。
レベルCは、そのレベルBを2つ合わせて半分にしたもの。
そんな感じで、ずっと半分にし続けている。

この作業が、意外と楽しい。
自分の耳が、何を“残す”のかが毎週わかるからだ。
聴き方に癖が出てくるのも面白いし、突然、全然違うジャンルの曲が急浮上したりもする。
「レベル」は企画というより、自分の感覚の記録に近い。
音楽との距離感がそのまま出る。

じゃあ、このまま進めていったら、レベルZに辿り着くまでどれくらいかかるのか。
計算してみたところ、ざっくり128万年だった。
もはや人類の歴史より長い。
そう考えると、この遊びは、生きている間には終わらない。
でも、それでいい。
むしろ、その終わらなさがいい。

音楽は、誰のために聴いてるわけでもない。
誰に評価されるわけでもないし、誰が褒めてくれるものでもない。
ただ、自分だけのスピードで選び、自分だけの耳で楽しむ。
その結果が「レベル」になっているだけの話。

ひとりで音楽を聴くことには、自由がある。
誰にも合わせなくていいし、誰の顔色も見なくていい。
ただ、流れてきた音に反応するだけ。
それだけで十分に豊かだと思う。