
僕は地べたに座ることができない。
正確に言えば、できなくはないが苦手だ。
椅子やソファなら問題ないが、パソコンに向かう以外はだいたい立っていることが多い。
昔から落ち着きのない子だったらしいので、そのせいもあるのだろう。
西千葉時代に仲の良かったカメラマンが、自宅アパートで酒を飲むときは台所で音楽を聴きながら立って飲むと言っていた。
それが妙に印象に残っていて、以来、自分も台所で立って酒を飲むようになった。
利点は多い。
片付けも楽だし、その場でつまみも作れる。
アップテンポな音楽なら踊れるし、体を揺らしていると酔いも早い。
改めて考えると、良いことづくしだ。
こうして考えると、かつて奥様方に揶揄されていた“キッチンドランカー”という言葉も、なかなか的を射ている。
どこか後ろめたい響きがあったが、もっと流行ってもいいのではないかと思う。
これからは台所の音響も良くした方がいいだろう。
もっとも、僕はヘッドフォンで没入して聴くので、そこは不要だが。
キッチンに限らず、立って飲むのが好きだ。
最近はあまり見ないが、一時期、立ち飲み居酒屋が流行っていた。
完全に廃れたわけではないだろうが、減ったのは事実だと思う。
立ち飲み屋の思い出は三つある。
一つ目は、西千葉の立ち飲み屋。
これから立ち飲みが来るかもしれない、というタイミングで始めた店で、商売がうまいなと思った記憶がある。
ただ、客側も楽しみ方が分からなかったのか、途中から椅子を出し始めていた。
それはそれで面白かった。
その店で印象的だったのが、カウンターに置かれた金の受け皿だ。
そこに現金を入れておき、料理と引き換えに店が持っていく。
いわばキャッシュオンデリバリー。
当時は珍しくて、妙に楽しかった。
二つ目も西千葉のカクウチ。
今も続いているらしいが、遠くてなかなか行けていない。
当時は知り合いが多くて、とにかく楽しかった。
東京に出てきたばかりの頃は、ああいうネットワークを大事にしていたが、最近はまったくやらなくなった。
良いのか悪いのかは分からない。
三つ目は、渋谷駅近くにあった根室食堂。
駆け出しで、バイトをしながら脚本を書いていた時代。
仲間たちとほぼ毎日のように通った。
あら汁が安くてうまくて、最高だった。
まとめると、立ち飲みに悪いことは一つもない。
立てなくなったら、それは終了のサインでもあるし、体調のバロメーターにもなる。
唯一の欠点があるとすれば、行儀が悪いと言われることくらいだ。
一人で飲むなら、キッチン立ち飲み。
これは本気でおすすめする。